Feature Vol. 03 モーション、動きと気持ちの関係性

ゲームにおける「動き」。ゲームをよりわくわくさせるインタラクション。そこにはどんな仕組みが隠されているのでしょうか? たとえば、人の心を動かす法則のようなものが存在するのでしょうか? 動きが人に与えるものとは? 探っていきましょう!

Part 2

映画という表現世界! 静が動になる面白さ?

Preface

10月29日に公開を控える映画『デスノート Light up the NEW world』。“キラ”と“L”の戦いを描いた前作『デスノート※』より10年後の世界を描く本作は、佐藤信介監督※がメガホンを取り、東出昌大、池松壮亮、菅田将暉という実力派若手俳優を主演に迎えた完全オリジナル作品です。今回は作品公開前の貴重なお時間をいただき佐藤信介監督に「動き」についてお話をうかがいました! 映画において「動き」とは? 表現のこだわりとは?

10年経った今、オリジナルの『デスノート』を手がける意味とは?

goodLOOPS 特集第3回目のテーマは「動き」。なんと『デスノート Light up the NEW world』の監督を務める佐藤信介監督にお話をうかがえることに! Part 1ではモバイルゲームにおいて「動き」がどんな意味を持つのか? どんな表現のこだわりがあるのか? gloopsメンバーにお話してもらいました。モバイルゲームと映画の表現。違いはどんなところにあるのでしょうか? まずは、作品についてうかがっていこうと思います。なぜ前作より10年経った今、『デスノート』という作品を制作されることになったのか? どのように前作を書き換えていこうと思われたのでしょうか?

佐藤監督「今作の話を聞いたのは3、4年前だったんですけど、気持ち的にはまず驚きましたね。『えっ!?』っていう(笑)タイミング的に『GANTZ※』が終わってオリジナルで何か制作したいなと考えていたときでした。前作が強大な作品なので、その続編ってプレッシャーがあったのかってよく聞かれるんですが、どっちかっていうと『何ができるのだろう』っていうわくわく感、武者震いのような気持ちが強かったかな。

オリジナルといっても原作があることには変わりません。『デスノート』という確固たる世界観がそこには存在します。真っ白な状態のオリジナル作品と違った部分はあるでしょうか?

佐藤監督「『GANTZ』をやったときも1本目は原作に近いものにするけど2本目はオリジナル要素を強くし、3本目はつくらないという企画意図がありました。原作は続いているけれど2部で完結させるという。他の実写化した作品もそうなんだけど、正確につぶさに原作を再現しているわけではなく、ある種のオリジナリティというのはどうしても映画化には加味されていくわけです。今回も比率はオリジナル要素が強いけれど、前作の流れを意識しながらやっていくという部分で作業的には似ていると思いました。原作者の大場つぐみ先生にもアイデアをいただきつつ制作したので、完全オリジナルとは違う感じがありましたね。」

『デスノート』の世界観の中でオリジナリティを紡ぎ出す。今回メインのキャラクターとなるデスノート対策本部の三島、Lの正統な後継者の竜崎、キラの崇拝者の紫苑の3名も前作の意思を継いだキャラクターになります。しかし、このメインキャラクターが3人というのが前作とは違うところなのだと話します。

佐藤監督「今回、誰が悪で誰が善なのか、まったくわからないというのが狙いとしてあります。前作はキラとLの2軸体制、悪と善っていう。ただ今回は三つ巴になっていて、善悪がぐるぐる回っていく。それが今っぽいなと思ったんです。今的な『デスノート』をつくりたい。時代が違えば、今作もまた違うものになっていたと思います。」

確かに、何が悪で何が善なのか。多様化が進む社会で、それぞれの価値観での正義が存在していますよね。今作にはそれが映し出されているのでしょう。つくり込んだ脚本ではあるけれど、振り返ってみると自分たちの足跡を見つけることもあれば、新しい発見があったと佐藤監督は話します。

リアリティのこだわり。表現の鉄則

佐藤監督の作品は異世界のもの、現実にはないものを描くことも多く、『デスノート』や『GANTZ』が最たる作品でしょう。映画の中で、まるでそれが本当にそこにいるかのように、違和感なく現実とマッチしています。特に今作では「リアリティ」というキーワードのもと、デスノートがつくられたり、死神も声を担当した俳優の顔の動きをモーションキャプチャ※して反映させたりしたとか…。佐藤監督の表現のこだわりとは?

佐藤監督「たとえば、異界のものであるとか、フィクション性の高いものを見せるとき、本当のドキュメンタリーのようなリアルさではないけれども映画の中でのリアリティを重んじる部分があります。今回であれば死神なんだけど、僕たちが人間と接しているものと同じか、それ以上のリアリティが欲しいなと。映画的な挑戦ではあったんですけどね。息遣いが感じられるような、ちょっとこう近づいてみたいなっていうリアリティをつくりたかった。そういった息づくキャラクターがいる世界の中で、なんともいえない感情が生まれたらいいなって思いながらつくっていました。」

『デスノート Light up the NEW world』で死神たちは、ふと気づいたときに傍にいて、人間を観察したり心を傾けたり…。まるで人間界にいるのが普通のことのように自然に存在しています。映画の中だけでなく、ふと自分の世界の中にも死神がいそうな、そんな感覚になるほど溶け込んでいました。なるほど、これが映画の中のリアリティ! そして作品の鍵であるノート「デスノート」にも監督のこだわりはしっかりと息づいています。一つひとつのデスノートが今までどんな主人に使われていたのか、そんな裏側の設定まで感じる個性的なノートたちです。

佐藤監督「デスノートなんだからまずはノートをつくろうってなって(笑)じゃあ、何なんだこのノートの材質は、から始まりましたね。映画的な映り方もあるので、凝ればいいってものでもないんですよ。映画の中でカメラがぐっとノートに寄るシーンがある。ここで『あぁこんななんだ!?』って思わせるようにつくりたかったんです。ノートも死神もつくり方は一緒です。まずは裏の裏の設定から始まって、たとえばリュークがしている耳飾りは誰がつくっているのかな?とか。いろいろ、さもありそうな裏設定やそこから浮かぶ素材感などを考えながらつくっていきました。“さもありそうな”そういう感覚を大事にしていました。」

心を揺さぶるってどうするの? 静から動への法則

Part 1で、ゲームの中のインタラクションはプレイヤーをわくわくさせ、ストーリーを彩るものであるというお話がありましたね! わくわくさせるというのは心を揺さぶるというのに近いものがあると思うのですが、佐藤監督は観客の心を揺さぶるためにこだわっている動的演出や、法則のようなものをお持ちなのでしょうか?

佐藤監督「法則ね(笑)…うーん、なんだろう、言葉では言い表せないけど、要するに、あーきたな!っていう頭の芯を突くような感覚、ひたすらそういう感覚を求めてやっています。映画は映像も音楽もある。すべてが微妙な感覚の積み重ね。これをこうしとけばいいだろうみたいな鉄則もうまくいかないことがしょっちゅうです。原作があってそれを映像化するときよくあるのは、原作をそのまま描いてみたけど、なんかビビビ!って感覚がこない。原作もいろいろな機微も含め、絶妙なバランスでつくられていたりするんですよね。ちょっとでも変わると全然違って見える。映画化するってメディアが変わるってことなので、いろんなバランスがぐちゃーって崩れるんですよ。だから、原作を照らし合せてつくっていくのではなくて、絵の運びとか、あぁ気持ちいいとか、いいなぁこれっていう、映画ならではの感覚に集中して考えていったほうが、映画としてよく見える。映画としてのよさというのを追求していくことで、面白くなっていくんじゃないかな。」

漫画原作という動きのないものを映画化する。原作では見られなかった、そこにないものを見ることができるという意味が映画化という一言の中にはあると佐藤監督は話します。では、静的なもの(漫画)を動きのある映画にするという、難しさ、こだわりはあるのでしょうか?

佐藤監督「そうですね。止まったものが動きだすというところが本当に面白いところで、僕らは本当にそこで生きているようなものだから。止まっている画ではなくて動きがある。さらにその動きは次の動きに繋がるし、もっというとその次の次の動きにも繋がる。とにかく連綿とした動きの造形なんです、映画は。今回会議室のシーンが多いんだけど、会議室の中に動きがないのかというとそんなことはなく、動きに溢れている。そこをどう撮っていくのか? 僕の中でその面白さがすごくあるんです。だから、今回のように密室が多い世界でも、たとえば大規模な街を使っての作品も、僕の中ではほぼ同じような感覚なの。僕らがつくり出しているのは動きの連鎖だから、そこをどうつくっていくのかということに毎回興奮があって、映画がいつも動きに溢れるように考えています。」

映画でもゲームでも、プレイヤーや観客がつい見てしまう動きというのは、つくり手がこれだ! という確信とともに生まれ出た表現なのかもしれませんね。今回佐藤監督からも出た「気持ちいい」と思うところを集中してつくるということ。gloopsのメンバーも同じように「気持ちいい」表現を模索していましたね。つくり手もプレイヤーも観客も「気持ちいい」と思う表現、動き。それこそが人の心を動かす、魅了するものなのかもしれません。しかし、「気持ちいい」って理論的にはどのようなことをいうのでしょうか? 次回は、博報堂コンサルティングにお話をうかがい、よりロジカルに人の心を動かす原理について探っていきます!

©大場つぐみ・小畑健/集英社
©2016「DEATH NOTE」FILM PARTNERS

 モーション、動きと気持ちの関係性 Part 3  

この記事の情報は取材時点のものです。

Feature Vol. 03 モーション、動きと気持ちの関係性

ゲームにおける「動き」。ゲームをよりわくわくさせるインタラクション。そこにはどんな仕組みが隠されているのでしょうか? たとえば、人の心を動かす法則のようなものが存在するのでしょうか? 動きが人に与えるものとは? 探っていきましょう!