Feature Vol. 02 ゲームを続けたい心理、モチベーションを科学する!

「ずっと遊んでいたい!」「明日もこのゲームがしたい!」ゲーム好きなら寝る間も惜しんで遊びたいゲームと出会うことも多いはず。では、どうしていつもいつまでも遊んでいたくなるのか? 今回は、プレイヤーの「ゲームを続けたい」というモチベーションの秘密を探ります!

Part 3

モチベーションは○○で持続する!? データ解析の真髄!

Preface

特集「モチベーション × ゲーム」Part 2では、心理学を専門とする二人の先生にじっくりとお話を伺いましたが、いかがだったでしょうか? 些細なことで左右される人の心の動きを理解して的確に施策を打つことが、ゲームを長くプレイし続けてもらうために重要だということを再認識しました。では、もう一度データマイニングの現場に戻り「モチベーション」と「ゲーム」をつなぎ合わせ、具体的な施策案とともに、さらに深く「長く遊び続けてもらえるゲーム」について考えていきましょう! 今回はManabu I.も加わり白熱したトークを繰り広げました!

データマイニング部 部長 Manabu I.

株式・債券・為替・コモディティ市場のトレーディングロジックの開発・運用を経て、現在は株式会社gloopsにてソーシャルゲームにおけるプレーヤー行動分析による改善提案及びデータマイニング部門の統率を行う。

データマイニング部 Tomonori S.

遊技機メーカーを経て、2013年にgloopsへ入社。『大召喚!! マジゲート』、『大戦乱!! 三国志バトル』など大型コンテンツの分析担当を多数経験し、現在はマネジャーとして後身の指導にあたっている。

データマイニング部 Kouki E.

2014年新卒入社。大学在学時にソーシャルデータのテキストマイニング、推薦システムに関する研究を専攻。入社後は、コンテンツの分析担当を多数経験した後、分析手法やレコメンドエンジンの開発に従事。現在は新規タイトルの分析を担当している。

損したくない! プレーヤーがアイテムを貯め続けるのはなぜ?

Part 2で「内発的動機付け」と「外発的動機付け」のお話がありました。外から受ける刺激と、内から発生する気持ち。そもそもプレイヤーには「ゲームをしたい!」という内発的な気持ちがあるわけですから、その気持ちを高めるためにどう外発的な施策を打つか、ここが重要になってきます。つまり、ゲームにおいてモチベーションへの作用は外発的動機付けによる面が強いということです。そして、ここで注視しなければならないのがプレイヤーの行動です。いくら外発的な刺激を用意して面白さを伝えようとしても、気づいてもらわなくては意味がありません。そこで、データマイニング部のTomonori S.はこう話します。

Tomonori S.「そのプレイヤーが離れてしまった部分をデータで紐解くわけです。どうしてそこで止まってしまったのか逆算し、そのポイントまで到達しやすくしようだとか、順番入れ替えてみようだとか。こういう施策が運用初期の頃にデータマイニングと運用プランナーの間でよく行われるやりとりです。」

気づかせる手段というのが、Part 1でお話した「インセンティブを与えつつ、ゲームの仕組みを理解してもらう」施策だったりするわけですね。しかし、与えるのはリターンだけとは限りません。「回避のモチベーション」というものがあります。リスクを与えてモチベーションを高めるといったものです。

Manabu I.「そういった施策をしないこともないですが、そもそもリスクには必ずリターンがつきます。リターンを与えるときもそうです。対になるリスクがあるはずなのです。たとえば、回復アイテムをプレイヤーが貯めているとします。あるイベントではこの回復アイテムをつかって参加することができるのですが、このプレイヤーは参加しない。つまり、成長やアイテム入手が全くない『イベントに参加しない』というリスクを選択する一方、『所持アイテムを全く減らさなかった』ことをリターンとして感じているのです。いわゆる『損失回避』ですね。」

何かインセンティブを与えた場合、プレイヤーが何を受け取って何を手放したか。その行動に注視することが、次の施策への重要なデータになるということですね。さぁ、もう少し深く「損失回避」を考えていきましょう。プレイヤー行動の中に「得るよりも失いたくない」というの心理を上記の回復アイテムの例でより具体的に考えると、プレイヤーは何の損失を回避しているのでしょうか?

Tomonori S.「回復アイテムを貯める心理は、『いつかはわからないんだけれども、これをつぎ込むようなイベントがいつか来るだろう』というもの。その機会の為に今はこれを使わない。“ここぞ”と思うイベントが開催されたときに、『肝心の回復アイテムがない』 というリスクを回避しているわけです。」

人は、何かを得たときの喜びよりも同額の損失の悲しみのほうが、より強く感情を揺さぶられるのだそう。けれど、損失回避ばかりされてはゲームを楽しんでもらえません。リターンを適切に伝え、プレイヤー個々に対して段階的にリターンを設定するなどの環境の構築が大事になってくるとManabu I.は話します。

プレイヤーが同じ行動をする理由? 公式Wikiの意図

行動経済学の中に「群集心理」というものがあります。これはつまり、周囲の多くの人がとっている行動と同じ行動をする傾向、心理的メカニズムのことです。ゲームのプレイヤーにももちろんこのメカニズムが発生しています。

Tomonori S.「不合理な行動だけども、みんながやっていたからと同じ行動をする人は多い。」

では、こういった行動を操作、誘導することは可能なのでしょうか?

Tomonori S.「操作というか、『あえて行動させる』ということはあります。たとえば、公式wiki※みたいなものです。情報交換するような場をこちら側から提供して、群集心理を掻立てさせるのです。さすがに情報操作はできないですけどね(笑)」

同じ情報、知識を共有し、ゲームの面白さをより多くの人に体感してもらう。プレイヤー同士が互いに作用し合い、面白さを追求していく。プレイヤーに自発的に行動してもらうことが大事なのかもしれません。Kouki E.はゲームのギルド※の中も群集心理を育てる環境だといいます。だからこそ、どのようなプレイヤーを掛け合わせてあげるのかでモチベーションに変化が生まれるというのです。

Kouki E.「結局同じような属性の人、同じ時間に遊んでいるような人とコミュニケーションをとることが群衆心理を育てるのだと思います。なので、『こういう属性の人はこういったギルドに入ってこんな行動をしている』というようなプレイヤーの属性と所属先ギルドにおける行動の関係性を分析したりします。例えば、Aというギルドが『他ギルドとの戦い』に対するモチベーションが高いとします。そのギルドが対戦で負けてしまう。『戦いに負けて悔しい』と思う『悔しい』というモチベーションは、そのプレイヤーにとって丁度いいギルドだからこそ生まれているようにも思うんですね。周りのプレイヤーが強すぎたりすると、戦いに参加しなくても勝てたりする訳ですから。同じ属性のプレイヤーの集団だからこそ、相乗効果が生まれているのかなと。ですから、プレーヤーに対して同じ属性のギルドをおすすめしてあげるというのは大事なのだと思います。また、おすすめしたギルドがちゃんと盛り上がっていることも重要です。」

そういったギルド内での盛り上がりはコメント数などで分析しているそうです。現状、具体的にコメントの内容はチェックしているものの、システムに組み込めていないため、今後組み込めていけば面白いともKouki E.はいいます。

向き合った先に見えるプレイヤーとの関係

プレイヤーの行動をさまざまな視点でデータを採取し分析するデータマイング部。考察に考察を重ね、人間の行動心理を掛け合わせ、いかにプレイヤーにゲームの面白さを体感してもらうのか、あらゆる施策を考えています。では、結局プレイヤーのモチベーションを上げるために効果的な施策とは何なのでしょうか?

Tomonori S.「施策全部ですね。最終的に読み取りたいのはプレイヤーのモチベーションの持続と維持なのです。インセンティブを与えるにしても人間って少し先の未来、たとえば明日のイメージはつきますけど、1年後のためにこの行動をするということはイメージしにくい。だから即時性のある『明日もきてくれたらこんな楽しいことやってるよ!』という施策を打つ。一方、今から1年後っていわれると想像つかないものの、自分がやり続けてきた1年っていう時間は評価してもらいたいものです。だから、1年間遊んでくれたプレイヤーに感謝の意を込めてプレゼントをしたりすると、満足感を刺激することになります。まずは明日、1週間後、翌月、そして気づいたら1年経ってた。みたいに導いてあげるのです。」

さらにTomonori S.は、長く遊んでくれているプレイヤーと新規のプレイヤーに対しても施策は変わってくるといいます。新しいプレイヤーが離脱しそうな場合はゲームの面白さが伝わりきっていないので、ゲームをより理解しやすくなるようなことを考えるのだそう。

Manabu I.「これは、初期のプレイヤーの一例なんですが、過去自社のタイトルで、チュートリアルでキャラクター強化の流れまではプレイヤーに伝えることはできたが、その後、離脱する人が多く出てしまった。何をするゲームかわかってなかったんですよ。でも本当は、キャラを強化する満足感ではなく、強化したキャラでクエストに参加して戦うことがこのゲームの面白みです。じゃあどうしようかっていうことで、強化のページにクエストにダイレクトに飛べる導線をつけて行きやすくさせてあげました。みんなクエストに行き継続率が上がりました。」

Tomonori S.「逆に古くからのお客さんのほうが難しいですね。小手先は通用しないので、大きなイベントを用意したり、機能を追加したり。たとえば『大戦乱!! 三国志バトル』※であれば『キズナ』といったスキルレベルの上限解放するシステムを入れてみたりしました。」

ゲームを遊び続けてもらうためにはモチベーションを持続させることが大事です。では、モチベーションを持続させるためにはどうしたらいいのか?その答えを追いかけて取材を進めてきました。さまざまな視点でプレイヤーの行動を読み、声なき声を聞く。その声に対して最も効果的な施策を打つ。一つひとつに対して適切な課題設定、外からの刺激をつくることが、「楽しい!」「面白い!」という内発的な動機に繋がっていくのでしょう。

結局はプレイヤーが100人いたら100通りのデータが出てくるわけです。データ分析といっても解析しているのは人間、決まった正解があるわけではありません。「データマイニングにはさまざまなスキルが必要」なのだとKouki E.はいいます。だからこそ、いろいろな部分に特化した人がデータマイニング部には集まっているのだそう。「プレイヤーのデータを見て、みんなで考えるというのはgloopsならでは文化だ」とTomonori S.は話します。

gloopsにとってデータは無機質なものではありません。プレイヤーとのコミュニケーションの手段のひとつなのです。「自分たちの面白さを信じ、プレイヤーの裏の声まで真摯に受け止める」。こういった姿勢で取り組むからこそ、心理学や行動経済学のノウハウが活きてくるのでしょう。なぜ、そこまでプレイヤーに向き合うのか? それは結局、「ゲームの面白さを知ってほしい」という内発的な動機があるからなのです。今回のテーマは「モチベーション × ゲーム」でしたが、いかがだったでしょうか? 想像以上に細やかな施策が出てきましたね。次回の特集テーマは「モーション」。ゲームのインタラクションを紐解きます。お楽しみに!

この記事の情報は取材時点のものです。

Feature Vol. 02 ゲームを続けたい心理、モチベーションを科学する!

「ずっと遊んでいたい!」「明日もこのゲームがしたい!」ゲーム好きなら寝る間も惜しんで遊びたいゲームと出会うことも多いはず。では、どうしていつもいつまでも遊んでいたくなるのか? 今回は、プレイヤーの「ゲームを続けたい」というモチベーションの秘密を探ります!