Feature Vol. 02 ゲームを続けたい心理、モチベーションを科学する!

「ずっと遊んでいたい!」「明日もこのゲームがしたい!」ゲーム好きなら寝る間も惜しんで遊びたいゲームと出会うことも多いはず。では、どうしていつもいつまでも遊んでいたくなるのか? 今回は、プレイヤーの「ゲームを続けたい」というモチベーションの秘密を探ります!

Part 2

報酬だけでは足りない!? モチベーションの仕組み

Preface

今回の特集テーマは「モチベーション × ゲーム」。Part 1では、gloopsで実際にデータを解析している「データマイニング部」のメンバーにデータから読み取れるユーザーの動き、実際に行っている施策などについて話を聞きました。同じゲームで遊び続けてもらうために日夜さまざまなデータと向き合うgloopsメンバー。しかし、その施策は実際に「遊び続けたくなる人の心の動き」に則しているのでしょうか? ゲーム業界の中では王道とされる手法も、人の深層心理という点から見たときに、本当に理にかなっているのでしょうか? Part 2ではモチベーションについて研究をされている東京未来大学 モチベーション行動科学部 学部長 角山剛先生と同大学同学部で認知心理学の講師をされている岩﨑先生を訪ねました。

モチベーションの正体、軸となる「3つの要素」とは?

ゲームを長く遊び続けてもらうためには、いかに「ユーザーのモチベーションを持続させるか」が重要になってきます。では、モチベーションとはそもそものところ、何なのでしょうか?

角山先生「モチベーションは日本語でいうと“動機付け”です。もともとモチベーションはラテン語で『動く』という意味の言葉からきています。『何か』に向かって動く、とか、活動していくということです。では、この『何か』というのは何なのか。それは、『目標』です。“がんばろう”といっても対象がないと頑張れませんよね? モチベーションには必ず目標が必要なのです。つまり、人が目標に向かっていく精神的なエネルギーをモチベーションと呼ぶのです。さらにモチベーションを分解すると3つの要素にわかれると角山先生は話します(※図参照)。」

人は目標を決めると、その達成のために、日々頑張ります。達成に近づくにつれて気持ちが高まり、目標が遠くにあるときはやる気がでない。このような経験は誰しも身に覚えがあるのではないでしょうか? そういった気持ちの強弱もモチベーション管理には大事な要素なのです。

東京未来大学 行動科学部 学部長 角山 剛先生

モチベーション持続に秘訣はあるのか?

先述した通り、人間には気持ちの強弱があります。この変化をコントロールしないと目標達成には辿りつけません。つまり、ただ目標を立てるだけではモチベーションは持続できないということです。

角山先生「例えば、ダイエットをして年間12キロ痩せようという目標を掲げる。でも、これだといつ何をするべきなのか、内容が漠然としてしまいますよね。これを月に1キロ痩せようという設定にしてみると、より具体的になってきます。目標というのは細分化して、より明確化していけばそれだけ自分に身近なものになるため、『やるぞ!』という気持ちが強くなるのです。」

目標を細分化して、達成可能な目標を設定していくことが大事なのですね。しかし、簡単に達成できる目標はモチベーションに繋がらないとも角山先生は話します。

角山先生「モチベーションの要素のひとつである気持ちの強弱の部分ですが、簡単に達成できてしまうものは、気持ちが高まらないのです。だから、難しい目標を明確化していくことが必要になってきます。」

難しいというのは、自分にとってどのくらいのハードルのことをいうのでしょうか?

角山先生「そうですね。難しすぎてもモチベーションは下がってしまいます。要はね、その目標を自分が納得しているかというのが重要なのです。目標自体を受け入れているかによって難しさがずっと続いていっても、モチベーションは維持できるものです。」

「これが自分の目標なんだ」「この目標を達成できれば成長できるぞ!」と、目標に納得して自分の中に落とし込めれば、どんどん気持ちを高めていくことができるのだそう。確かに、「何で私はこれをやらなければいけないのだろう?」という疑問が浮かんできてしまったときは、勉強でも仕事でもやる気がでませんよね?

しかし、ゲームにおいての目標とは、自分で決めた目標ではありません。他人が決めた目標です。自分で立てた目標のほうが納得感が増しモチベーションが持続するのではと、gloopsデータマイニング部のKouki E.は仮説を立てました。はたして「自分で立てた目標と他人が立てた目標」では、一体どのような違いがあるのでしょうか?

角山先生「彼の質問には重要なテーマが含まれています。通常は、外から与えられた目標よりは自分で立てた目標のほうが自分に関与するため受け入れやすくなり、納得感が生まれる。でも逆にいえば、納得感が生まれれば外から与えられた目標でも効果は一緒なわけです。だから、納得感が大事というのはそういうことです。」

ゲームをプレイする際に「このゲームを遊ぶ!」と決めるのは結局自分の選択です。そこで与えられた目標に対しても「強くなりたい。○○レベルまでいきたい」という気持ちがあれば、それは納得できる目標につながりますよね。

ゲーム自体が面白いと感じさせる。その秘訣とは?

モチベーション持続のためには、その目標が自分にとって納得のいくものである必要があるということがわかりました。それを受けて、Part1の話を思い出してください。Kouki E.がこんなことをいっていました。“最終的にゲーム自体が本当に面白いと思ってもらえるか。『この報酬が欲しいからこのゲームがしたい』のではなく、『このゲームが面白いから遊びたい』と思ってもらえる。そういうゲームであれば、報酬がなくても遊び続けるのではないでしょうか?”と。このゲーム自体が面白いことが大事というのは、モチベーション持続に関わってくることなのでしょうか?

角山先生「最近よくいわれるのは、内発的な動機付け、外発的な動機付けといわれるものです。内発的な動機付けというのは、例えば自分の中で、面白い!とか、楽しい!という気持ちが生まれると、金銭的な報酬とかがなくても一生懸命取り組みますよね。そういった自分の中から発生する動機です。小さな課題を設定するなどの外的な刺激だけで人間のモチベーションを高めていくのは難しいところがあります。」

とはいえゲーム自体を「楽しい!面白い!」と思わせるのは簡単なことではありません。ゆえに、数え切れないほどのゲームが生まれては消えていってしまっているのです。Tomonori S.は「内発的動機に踏み込む王道はないのでしょうか?」と角山先生に聞きました。

角山先生「内発的動機付けと外発的動機付けはよく対立するものと捉えられるけれども、実際はそうではない。最初にどういうことであったって、外的な刺激で始まると思います。最初から内発的な動機付けだけで生まれることってなかなかない。ゲームでいえばね、最初はアイテムをゲットできるというのが目的であっても、そのうち、ゲームに没入できるというのが快感になってくる。ゲームをやってクリアして、『俺ってすごいじゃん』って思ったときに次のステージに進むことができる。それはまさに、有能感を充足させることになってくる。その感覚が得られていけば、それが持続してゲームそのものの面白さに繋がっていくのかなと思います。」

モチベーションの阻害要素にはどう対処するべき?

人間のモチベーションを持続させるためには外発的な刺激を与え内発的な気持ちを生み出すのが重要だということがわかりました。では、逆にモチベーションを阻害するものとは何でしょうか? 認知心理学を専門とする岩﨑先生にお話をうかがいました。まずは、認知心理学でモチベーションに対してどのようなアプローチができるのか話してくださいました。

岩﨑先生「認知心理学とは、『人間の頭の中でどのようなことが行われているのか』を解明していこうっていうのが主な研究です。課題に対して、どう設定したらやりやすくなるのか、または、何かを持続するときに邪魔になるものを極力減らすためには何が必要か。ゲームの種類に関わらず、ゲームをやるときに邪魔なものは何かと考えたときに、操作性が悪いとか、文字が読みにくいとかがありますよね。そこで、操作性が悪い要因を除去する。BGMなんかで気分を上げるなど、雰囲気をつくる。そういった仕組みづくりに認知心理学が役に立つわけです。」

東京未来大学 行動科学部 認知心理学講師 岩﨑先生

確かに、ゲームが面白くても操作性が悪いと離脱につながります。そういったゲームを遊ぶときに邪魔なことが「ストレス負荷になる」のだと岩﨑先生は話します。となると、ストレス負荷が多い場合、目標があってもモチベーションは持続しにくいのでしょうか?

岩﨑先生「自分のやりたいことであれば、我慢するんでしょうが、気晴らしだったり、楽しみたいのにも関わらず、ゲーム以外のところでストレスを与えられると、モチベーション維持は難しいでしょうね。」

では、遊び続けられるポイントはどこにあるのでしょうか?

岩﨑先生「角山先生もおっしゃっていますが、適切な目標を常に設定していること。かつ、課題の達成のレベルが、自分ががんばれば乗り越えられる程度のもの。難しすぎると、チャレンジしない。どうやっても達成できない、無理ゲーっていわれるものですね。逆に優しすぎると、作業感が強くなってしまい楽しくない。ちょっと工夫したりだとか、頑張ればできるっていうレベルのものがいいです。ロールプレイングゲームとかがわかりやすいでしょう。ある程度のレベル、倒せるレベルになると攻略可能だというのがわかってきますよね。段階的に難易度が変わっている。あとは、プレイヤーに対しての報酬が大事です。アイテムでなくてもいいのです。スコアだったりしても報酬になり得ます。」

インターネットに繋がっているモバイルゲームでは、スコアがすぐに表示されて他のユーザーと比べることができます。そういったフィードバックの即時性も大事なのだそう。さらには、報酬を与えるタイミングをランダムにすることによって、その行動に対して、より強く行いたいという気持ちになるのだと話してくださいました。欲しいアイテムが出るか出ないか、それは自分にはコントロールできない状況です。出ないかもしれないし、出るかもしれない。その状況こそが、強い気持ちを生むのですね。さて、いよいよ、次は本特集テーマ最終回です。最後にもう一度データマイニングの現場に戻り、先生方に伺った話と照らし合わせ、ゲームのモチベーション持続の施策とは? ゲームにおけるモチベ―ションのメカニズムは? 詳しく紐解いていきたいと思います!

 ゲームを続けたい心理、モチベーションを科学する! Part 3  

この記事の情報は取材時点のものです。

Feature Vol. 02 ゲームを続けたい心理、モチベーションを科学する!

「ずっと遊んでいたい!」「明日もこのゲームがしたい!」ゲーム好きなら寝る間も惜しんで遊びたいゲームと出会うことも多いはず。では、どうしていつもいつまでも遊んでいたくなるのか? 今回は、プレイヤーの「ゲームを続けたい」というモチベーションの秘密を探ります!